2016年2月11日木曜日

フィリップ・シーシュキン 「騒乱の谷」(Restless Valley) ー キルギス政変についての本

2013年の秋の頃にモスクワ在住の同僚から興奮した様子のメールが届いた。「この本すごい。読んだ?」 さっそく書店に買いに行った。WSJのスタッフ・ライターだったフィリップ・シーシュキンというジャーナリストによるレポートだ。

ビシュケクに赴任していた当時に気になっていたいくつかの事柄についての記述をチェックしてみた。2009年の3月に元大統領府の高官が不審な事故死を遂げたことの顛末が、まるで小説のように細密に描かれている。バキエフ大統領の側近で「灰色の枢機卿」というニックネームで呼ばれるほどの実力者と目された人が、バキエフと袂を分かつとしばらくして交通事故にあった有名な事件だ。2010年4月のキルギス政変以前にはその真相が報道されることはなかった。

この本のタイトルは「騒乱の谷」とでも訳すのだろうか。副題に「中央アジアの中心の革命、殺人、陰謀」とある。2013年に出版されたこの本は2005年のチューリップ革命から2010年のキルギス政変までの事情を詳細に記録している。第4章「キルギスの暗い年月」の中に出てくる大統領の息子マキシムをトップとするグループについての記述は鬼気迫るものがある。「プロの仕事である。中央アジアもこういう書き手によって報告される時代となった」という書評に強く共感した。

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