2016年2月11日木曜日

知の巨人イブン・シーナはブハラ近郊で生まれた

ウズべキスタンという国の名前を知らなくてサマルカンドの名前を聞いたことのある人は多い。青いモスクの色はサマルカンド・ブルーと呼ばれ憧れている人も多い。ブハラはサマルカンド同様に歴史的な遺産が素晴らしい街だ。高校生の頃に世界史で、イスラム世界の医学、天文学、文学は世界の最高水準にあり、イブン・シーナ(980-1037年)という医者・哲学者がいたと習った記憶がある。この人はブハラ近郊の出身だ。

タシケントに勤務するようになって、出張でサマルカンドへ行くとウルグベクという人の天文台の遺跡のそばに記念館があった。イブン・シーナの肖像が飾ってあり、ブハラの近くで980年に生まれたと説明がついていた。シルクロードの遺跡発掘で名高い加藤先生の「中央アジア歴史群像」(岩波新書)によればイブン・シーナは「百科事典的大学者」と形容されている。

間野英二という人の「中央アジアの歴史」(講談社現代新書)によると9世紀から10世紀にかけてイラン系のサーマーン朝が成立し、サマルカンド、フェルガナ、タシケントを含めたオアシス地帯全域を支配し、東方イスラム世界におけるもっとも強力な国家が出現した。ササン朝ペルシャとの関わりによって自らの正統性を高めようとしたこの王朝はイラン・イスラム文化の普及に力を入れ、王朝の都ブハラを中心に文化が栄えた。ブハラにゾロアスター教の廟があるのもこの名残りだ。

ブハラ語というのをググってみると「ブハラ・ユダヤ語」とある。この辺りにはペルシャ語である「ファルシ」を話す人が多いと聞いていたので意外だった。かつてブハラにはたくさんのユダヤ系の人が住んでいてヘブライ文字を使っていたそうだ。イブン・シーナの名前についてもシナイ半島にちなむもので、この人はユダヤ系だったのではないかとも言われてそうだ。中央アジアのオアシス地帯で様々な文化が混じり合っていたのだろう。

2013年12月公開のドイツ映画(英題”The Physician) でベン・キングスレーがイブン・シーナを演じている。

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