2016年2月11日木曜日

スコピエでチビ太が死にかけたこと

ロシアの歌に「家がないのは幸せだ。火事の心配をすることもない。犬がいないのは幸せだ。隣人に毒をもられることもない」と歌われるくらい旧ソ連圏の国々に住んでいる犬の立場は微妙だ。ウズベキスタン生まれの兄弟犬の兄チビ太は食いしん坊で、雪を食べるのも大好きだった。マケドニアの首都スコピエに住んでいた時にチビ太が死にかけたことがある。庭のあちこちで匂いを嗅ぎ、時々は食べ物らしきものをぺろっと吟味している時に、なにか毒をなめたらしい。土曜日のお昼時で食事の支度をしていた妻の足元にやってくると、痙攣を起して倒れこんだ。

幸いなことに週三日働いてくれていたレンチェが家にいる時だった。「ミルクと蜂蜜を用意して」と断固とした口調で指示を出すと、チビ太を抱えて風呂場に連れて行った。妻は言われるままボールにミルクと蜂蜜を混ぜて持ってきた。チビ太は下あごの両脇をぐっと抑えられて口を開かされ、顔を仰向けにされ無理やりミルクを飲まされた。元気のないチビ太は半分以上こぼしたが、それでも強制的に蜂蜜ミルクを飲まされた。レンチェがタクシーを呼び、皆を市内にある国立の動物病院に連れて行ってくれた。病院に向かう途中でチビ太は少し元気が出てきた。妻の腕から抜け出そうとぐずぐずし始めた。「大丈夫みたい」と妻が犬の頭をなでた。

病院に着くとチビ太はステンレス製の診察台に乗せられた。慣れた手つきの女医さんが犬の前足に点滴のチューブをつけてくれた。5本注射を打たれた。注射の嫌いなチビ太だが、抵抗する力がなかった。レンチェにお礼を言うと、自分の飼っていた猫が何匹も同じ目にあって、毒殺されたことがあるので緊急対応のやり方を知っていると言う。この人がいなければ手遅れになったかもしれない。近所の人に大変な目にあったことを話すと、同じ通りでも猫が2匹、犬が1匹同じような目にあったということだった。マケドニアでは犬の散歩中にリンゴを投げられたり、大きな犬に襲われたり犬に関しては大変な思い出が多い。どうも社会主義の時代を経験した国々では犬というのは番犬として怖がられるか、野良犬として嫌われるものらしい。そういう国に生まれたら犬も大変だ。

兄弟犬の弟マッツ(おそ松)は食が細く、美味しいものでないと食べないのでこのような目にあったことがない。太った兄のチビ太に遠慮して小さくなって生きていることの反動で、外出して他の犬に会うとむやみと吠えたがる。困った犬だが愛嬌がある。











0 件のコメント:

コメントを投稿