2016年2月11日木曜日

グルジアの食卓 タマダの仕切りで宴は続く

1994年から1999年まで電力プロジェクトの担当者としてグルジアの首都トビリシを訪れるのはとても楽しみだった。地元の赤ワインで甘口なのがとても美味しい。血のような赤い色で、グルジア出身のスターリンが愛飲していたと聞くと複雑な思いもする。お昼時にはパン屋のおばさんが通りで「ハチャプリ!」と叫んでいた。名物のチーズパンが焼きあがったと告げているのだ。焼き立ては最高だった。グルジア料理ではハチャプリ、ハルチョ(クルミ入りのスープ)、タバカ(鶏の窯焼き)などが懐かしい。どれも香辛料が効いていて美味しい。

電力公社の人たちと「ニコ」というレストランに出かけたことがある。ポスターみたいな温かみのあるちょっと不思議な絵が壁にたくさんかかっていた。オリジナルは美術館にあるそうで、このレストランのはレプリカだ。レストランの名前はニコ・ピロスマニという画家にちなんでいる。画家が女優に恋をしてバラの花束を捧げる歌の物語は実話に基ついている。アリャ・プガチョヴァという人が歌って大ヒットし、日本でも加藤登紀子さんの「百万本のバラ」として紹介され有名になった。

ワインも食事も美味しいこの国で印象に残る言葉と言えば「タマダ」。英語のtoast masterに近い言葉だ。グルジアでの食事は大きなテーブルを囲む機会が多く、そのテーブルに着いた人は順番に祖国とか料理を作ってくれたお母さんから始まって様々なことに感謝するショートスピーチをしてから乾杯する。それから食事を楽しむ。このスピーチの順番をしきるのがタマダの役割だ。乾杯とスピーチが延々と続いて、とても楽しかった。この国の人たちがヴォトカではなくてワインを楽しむのもこの伝統にかなっている。ヴォトカだったら何時間も宴会を続けるのは大変だ。

グルジアの歌で思い出すのは「百万本のバラ」だけではない。「美しい人よ、あなたの歌い出したグルジアの歌を聴いて、懐かしい岸辺と、月明かりの草原と、別れてきた人の面影を思い出してしまった。哀しい思い出につながるその歌はうたわないでください」というプーシキンの詩にラフマニノフの曲がついた歌がある。音楽と絵画とスピーチとワインと料理。豊穣な国だ。





0 件のコメント:

コメントを投稿