電力チームのメンバーだった時のお客さんのほとんどは旧ソ連から独立した国々の電力公社の人たちだった。電力はロシア語でエネルゴだったのでアゼルバイジャンならアゼリエネルゴ、ウズベキスタンならウズベクエネルゴ、キルギス共和国ならキルギスエネルゴだ。グルジアの電力公社の名前が変わっていた。名刺を交換するとサクエネルゴとある。グルジア語でこの国の名前をサカルトヴェロということを知るまでは不思議だった。
最近になってグルジア政府の要請で、国名表記をグルジアからジョージアに変えることについて日本政府が検討しているというニュースが流れた。何故に長年使われて親しみのある名前をまるでアメリカの州みたいな名前に変える必要があるのだろうか?すぐにピンとくる人はかなり旧ソ連圏になじみのある人だ。
日本を例にとると「ニッポン」または「ニホン」という呼称がある。これに対応するのが「サカルトヴェロ」だ。日本はまた「ジャパン」とも呼ばれる。日本と付き合いのある国々で英語を対外用の言語として使う国が多いからだ。これに対応するのが「グルジア」だ。ジャパンは英語であり、グルジアはロシア語である。その国の国際関係史を反映して様々だ。ここで注意すべきはこうした地域の共通語としての英語やロシア語がすべての国で通用するわけではないことだ。ロシアでは日本は「イポニア」と呼ばれる。メキシコなら日本は「ハポン」だ。
自国の言語での名前を変更しようという国は少ない。日本についても「ニッポン」と「ニホン」を変更することは誰も思いつかないだろう。グルジア人にとっても「サカルトヴェロ」の変更はあり得ない。つまり「グルジア」と呼ばず「ジョージア」と呼んでほしいという要請は1991年にこの国が旧ソ連から独立して以来の国際環境の変化を反映してほしいというものだ。2008年にグルジアとロシアの間で戦争があったことはまだ記憶に新しい。
国名や地名の変更は旧ソ連地域に限ったことではない。インドの都市ボンベイがムンバイに変わったのは1995年のことだ。カルカッタはコルカタに2001年に変わっている。英語名から自国の呼び名への変更だった。最近もう一つ気が付いた。中央アジアのタラスの戦いで唐の軍勢を破り、中央アジアにイスラム支配を確立した「サラセン帝国」のことを中学・高校の世界史で習った。この栄光の国名が今では存在しないのだそうだ。これも「サラセン」というのが英語名なので、今では「イスラム帝国」と呼ばれるそうだ。
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