2020年9月5日土曜日

未明の攻防戦 滞在中のホテルの横で

1枚の忘れがたい写真がある。撮影は1994年2月。この年の夏から秋にかけてYenikendという水力発電所のリハビリと未完成ダムのプロジェクトで忙しく過ごしていた。この第1号案件は無事に12月に調印の運びとなった。事件が起きたのは翌年3月のこと。第2号案件の準備作業に着手するために豪州のコンサルチームと一緒にバクーに入って数日経っていた。クーデターを目指す反政府軍と当局の間で激しい未明の攻防戦が発生した。この写真の中央に映っているDom Sovietが主戦場。私たちのチームが泊まっていたHotel Azerbaijanはその隣にあった。私が起きた時にはすでに事態は双方がにらみ合う膠着状態に入っていた。その後の国営TVの放送は治安の維持を呼び掛ける当局のアナウンスだけ。情勢が収まるまで数日かかった。まだ携帯電話は普及していない時代だった。衛星電話のあるのは丘の上にあった別のホテルだけ。おそるおそる出かけてロンドンの本部と通信した。道路を警備していた部隊の兵士に厳しい調子で「何処へ行くのか」と誰何された。この時にわたしの働いていた組織の安全部に第一報を入れてくれたのは当時BBCの日本向けプログラムで放送翻訳の仕事をしていた妻だった。今となっては信じがたいような出来事だった。



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